【2026W杯】日本は「隠れ死の組」？グループF海外の反応と日程の罠

序論：ワシントンの狂騒と新時代の幕開け

2025年12月5日、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.に位置するジョン・F・ケネディ・センターにおいて、サッカー界の新たな歴史を刻むイベントが開催されました。2026年FIFAワールドカップ（W杯）のファイナルドロー（組み合わせ抽選会）です。

カナダ、メキシコ、アメリカの3カ国共催、そして参加国が従来の32カ国から48カ国へと拡大される史上最大規模の大会に向け、世界中の視線がこの「政治とスポーツが交錯する」舞台に注がれました。

会場にはインファンティーノFIFA会長やトランプ大統領も姿を見せるなど、政治的な演出が色濃く反映された今回のドロー。しかし、ひとたび抽選が始まれば、焦点は純粋な競技面へと回帰しました。

その中で、ポット2に属する日本代表（サムライブルー）が引き当てたのは、グループF。一見すると華やかに見えますが、その実、極めて危険な罠が張り巡らされた「混沌の組」でした。

本記事では、日本代表が入ったグループFの特徴、対戦国の戦力分析、さらに欧州主要メディアの評価を、現地の膨大な報道資料を基に徹底解説します。「死の組」の定義が曖昧になる48カ国制において、なぜこのグループFが**「最も予測困難（Hardest to pick）」**と評されるのか、その深層を読み解きます。

グループFの構造的分析：なぜ「隠れ死の組」なのか

抽選結果の全貌とグループFの位置付け

抽選の結果、グループFは以下の4チームで構成されることとなりました。

ポット	国名・枠	所属連盟	FIFAランク（参考）	特徴
Pot 1	オランダ	UEFA (欧州)	7位	伝統的な強豪、攻守にタレント充実
Pot 2	日本	AFC (アジア)	15位〜18位圏内	アジア最強、前回大会で独・西を撃破
Pot 3	チュニジア	CAF (アフリカ)	40位前後	アフリカ屈指の堅守、予選無失点
Pot 4	欧州PO勝者	UEFA (欧州)	20位〜30位台	ウクライナ、スウェーデン等の実力国

一見すると、FIFAランキング1位のスペインや前回王者アルゼンチンが含まれていないため、絶対的な「死の組」ではないように映るかもしれません。しかし、欧州メディアの論調を分析すると、このグループこそが大会屈指の「地雷原」であるという認識が浮かび上がってきます。

英紙『The Guardian』は、このグループを**「おそらく順位予想が最も難しいグループ（Probably the hardest group to pick）」**と評しました。

その理由は明確です。ポット1のオランダが絶対的な支配力を持っているわけではなく、ポット2の日本が欧州トップレベルに肉薄する実力を持ち、ポット3のチュニジアが極めて堅実な守備を誇り、そして何よりポット4から合流するチームが「欧州予選プレーオフの中で最も過酷なパスB」を勝ち抜いてくる強豪だからです。

ポット4の脅威：UEFAプレーオフ・パスBの正体

グループFの難易度を劇的に高めている最大の要因は、未確定の「第4のチーム」にあります。ここには、ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニアのいずれかが入ります。

通常、ポット4にはランキング下位の国が入ることが多いですが、今回は違います。特に「パスB」には、アレクサンデル・イサク（ニューカッスル）やヴィクトル・ギェケレシュ（スポルティングCP）といった世界最高峰のストライカーを擁するスウェーデンや、レヴァンドフスキ率いるポーランドが含まれています。

これらは実質的にポット2レベルの戦力を有しており、日本やオランダにとっても勝ち点3を計算できない相手となります。米メディア『Fox Sports』なども、この不確定要素がグループFを「カオス」に陥れる要因であると指摘しています。

対戦国詳細分析：欧州メディアの視点から

オランダ代表（The Oranje）：警戒とリスペクトの狭間で

現地メディアの反応 オランダ国内の反応は「安堵」と「警戒」が入り混じっています。大手紙『De Telegraaf』は、クーマン監督の「もっと悪い結果もあり得た」という安堵のコメントを紹介しつつも、日本に対する警戒感を隠していません。特に日本が前回大会でドイツとスペインを破った実績や、上田綺世選手らオランダリーグを知る選手の存在を脅威として挙げています。

戦力と戦術的特徴 現在のオランダは、かつての流動的な攻撃よりも、強固な守備ブロックと中盤の構成力を武器としています。

守備の要: フィルジル・ファン・ダイク（リヴァプール）を中心とした世界屈指の守備陣。
中盤の支配: フレンキー・デ・ヨングらがリズムを作る。
攻撃: コーディ・ガクポやシャビ・シモンズの個の力が鍵。

日本との相性 オランダメディア『Voetbal International』は、上田綺世選手や小川航基選手といった、現地リーグで得点を量産する日本人ストライカーを「内部情報を握るスパイ」のような脅威として捉えています。

チュニジア代表（Carthage Eagles）：アフリカの鉄壁

完璧な予選実績 チュニジアは派手さこそありませんが、守備力は驚異的です。『Sporting News』によれば、アフリカ予選グループHを無敗かつ失点ゼロで通過しました。

日本との因縁と環境 日本にとっては、2022年に0-3で完敗した相手でもあります。チュニジア紙は日本戦をグループ突破の「天王山」と位置づけています。また、試合が行われるメキシコのモンテレイは酷暑が予想され、北アフリカの環境に近いチュニジアに有利に働く可能性があります。

欧州プレーオフ・パスB勝者：見えざる強敵

もしスウェーデンが勝ち上がってきた場合、イサクとギェケレシュという欧州最強クラスの2トップが日本の脅威となります。また、ウクライナであれば強固な団結力、ポーランドであればレヴァンドフスキという絶対的な武器があり、どの国が来てもポット4の枠組みを超えた実力を持っています。

海外メディアによる日本代表の評価

2022年W杯以降、日本代表への評価は劇的に向上しました。多くのメディアが日本を「強豪国を脅かす存在」「グループ突破の有力候補」として扱っています。

“Global Force”（世界的な勢力）としての認識

The Guardian（英）: 日本を「Dangerous（危険な）」チームと評し、オランダの実力に肉薄していると分析。
The Athletic（米/英）: 日本対オランダ戦を質の高いフットボールが見られる「ファンの勝利」と表現。アジア予選の圧倒的な成績（得失点差+46）を評価。
Tribal Football: 独自のパワーランキングで日本を世界10位にランク付け（オランダは9位）。W杯優勝という目標も荒唐無稽ではないと分析しています。

森保一監督への評価

長期政権を敷く森保監督の戦術的柔軟性（3バックと4バックの使い分け）や、選手層の厚さを作り上げた手腕について、欧州メディアは高い敬意を払っています。

海外メディアが注目する日本人選手

三笘薫 (ブライトン)

『Sporting News』は「どのような守備陣もこじ開ける能力がある」と最大級の賛辞を送っています。『Fox Sports』は、オランダの強力な右サイドバックとのマッチアップを勝敗の分水嶺と見ています。

久保建英 (レアル・ソシエダ)

『Fox Sports』は彼を「将来有望な若手」ではなく**「実績あるクラック（名手）」**と強調。ソシエダでの実績と、狭い局面を打開する創造性が、チュニジアのような堅守崩しに不可欠とされています。

遠藤航 (リヴァプール)

リヴァプールの同僚であるオランダ代表選手たちとの対決が注目の的です。「チームの心臓」として攻守のバランスを保つリーダーシップが絶大な信頼を集めています。

戦場分析：日程、会場、そして気候という「第5の敵」

今大会、対戦相手と同じくらい重要なのが「環境」です。

節	日付 (現地)	対戦カード	会場	環境・特徴
第1戦	6/15	オランダ vs 日本	ダラス	屋内空調完備。環境は快適だが初戦の重圧あり。
第2戦	6/21	チュニジア vs 日本	モンテレイ	酷暑・高湿・高地。最大のリスク。
第3戦	6/26	日本 vs PO勝者	ダラス	屋内空調完備。

ダラスの初戦：空調完備の決戦場 初戦のオランダ戦は空調が効いた快適な環境で行われます。技術と運動量を武器にする日本にとって、実力を発揮しやすい好材料です。

モンテレイの罠：チュニジア戦の環境リスク 最大のリスクは第2戦。6月のモンテレイは気温35度〜40度、高湿度の準高地です。欧州組が多い日本選手にとって過酷な環境であり、暑さに慣れたチュニジア相手にスタミナ勝負となれば非常に危険な展開が予想されます。

結論と展望：新しい景色を、共に

「予測不能」を楽しむ覚悟

海外メディアの報道を総合すると、日本が入ったグループFは「死の組」という言葉では表現しきれない「泥沼の混戦グループ」です。オランダは絶対的な王者ではなく、チュニジアは鉄壁の盾を持ち、欧州プレーオフ組は爆発力を秘めている。そして日本は、それら全てを倒しうる力を持ちながら、足元をすくわれる脆さも排除しきれていない。

日本代表への提言

初戦必勝、あるいは「負けない」勇気: ダラスでのオランダ戦は、勝ち点1でも十分な成果と言える。無理に勝ちに行ってカウンターを受けるリスクを管理し、遠藤航を中心に中盤をコントロールできるかが鍵となる。
モンテレイ対策: 第2戦のチュニジア戦に向けた暑熱対策は、戦術以上に重要である。選手交代枠の積極的な活用や、ボールを保持して体力を温存するゲーム運びが求められる。
スカウティングの徹底: 2026年3月まで対戦相手が決まらない「第4のチーム」に対し、あらゆる可能性（スウェーデンの高さ、ウクライナの堅守など）を想定した準備が必要不可欠である。

最後に：理屈を超えて、僕たちができること

ここまでデータや現地の論調を並べてきましたが、これらはあくまで机上の計算に過ぎません。

厳しいグループに入ったこと、過酷な移動や気候が待っていること。これら全ての逆境は、日本代表が「新しい景色」を見るための舞台装置だと思いたい。前回大会でドイツとスペインを破ったあの興奮を、僕たちは知っています。

「隠れ死の組」上等じゃないですか。世界中の予想をもう一度裏切り、今度こそベスト8、そしてその先へ。厳しい戦いになるからこそ、僕たちの声援が選手の背中を押す風になると信じています。

頑張れ、日本代表！ワシントンで始まったこの物語の結末が、最高の歓喜で彩られますように。

日本代表の最新情報やチーム活動については、JFA特設ページをご覧ください。