はじめに:CS初戦、日本ハムがオリックスに快勝
「2025 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファーストステージが10月11日に開幕し、エスコンフィールドHOKKAIDOは多くのファンの期待に包まれました。北海道日本ハムファイターズとオリックス・バファローズによる初戦は、2−0で日本ハムが勝利。この試合は、投打の噛み合った、日本ハムの強さが示された一戦となりました。
この試合の勝利の立役者は、先発し好投したエースの伊藤大海投手、そして貴重な得点を挙げた万波中正選手と郡司裕也選手でした。さらに試合後、新庄剛志監督から明かされた投手継投の裏側には、独自の戦略がありました。このブログでは、エースの力投、打線の集中力、そしてベンチの采配がどのように勝利に結びついたのかを振り返ります。
I. エースの力投:伊藤大海が7回無失点
この日の勝利の基盤を作ったのは、先発の伊藤大海投手でした。7回を投げ、115球を投じて許した安打はわずか4本、9つの三振を奪い、無失点に抑える素晴らしい内容でした。
試合序盤、伊藤投手は毎回のように得点圏に走者を背負う苦しい展開が続きました。しかし、要所を締めるピッチングでオリックス打線に得点を許しません。その粘り強い投球は、まさにエースと呼ぶにふさわしいものでした。
試合後、新庄監督も「初回はどうなるかと思ったけどね。ああいうところで味方のミスをカバーするのがいいチームなんで、よく踏張ってくれました」と、その投球を高く評価しました。この言葉は、伊藤投手がチームを勝利に導く役割をしっかりと果たしたことへの賛辞でした。
伊藤投手のこの力投は、リリーフ陣の負担を軽減するという点でも大きな意味を持ちました。シーズン中、日本ハムは多くの先発投手を登板後に登録抹消し、万全の状態で次の登板に備えさせるという起用法を実践してきました。その中で唯一シーズンを通してローテーションを守り抜いたのが伊藤投手でした。この重要な初戦で7回を投げきったことは、首脳陣からの厚い信頼の表れであり、日本ハムが短期決戦を戦う上での彼の重要性を改めて示すものでした。
II. 試合を決めた二つの打席
投手戦となったこの試合で、日本ハム打線は数少ないチャンスを確実に得点に繋げました。その中心となったのが、万波中正選手と郡司裕也選手です。
万波が貴重な先制タイムリー
試合が動いたのは2回裏。先頭の郡司選手が二塁打で出塁し、犠打で1死三塁のチャンスを作ります。ここで打席に立ったのが7番・万波選手でした。新庄監督は「最低でも犠牲フライ」を期待していましたが、万波選手はオリックス先発・山下舜平大投手の球を捉え、三遊間を破る先制タイムリーヒットを放ちました。
犠牲フライではなくヒットで走者を還したことで、チャンスが続く形となり、チームに勢いをもたらしました。この一打に対し、新庄監督は「完璧な三遊間を破ってくれた」「もしかしたらこのシリーズのキーマンになってくれるんじゃないかなと期待してます」とコメントし、高く評価しました。
郡司のソロホームランで貴重な追加点
1点リードで迎えた4回裏、2死走者なしの場面。打席には5番・郡司選手が入りました。郡司選手が捉えた打球はレフトスタンドへ飛び込むソロホームランとなり、スコアを2−0としました。この追加点は、投手の伊藤選手を楽にする貴重な援護点となりました。
このホームランは、試合後のSNSでバットフリップも話題となり、新庄監督も「めちゃくちゃかっこよかったよって言いましたね」と本人に伝えたほどでした。
しかし、この一打の価値はそれだけではありません。シーズンを通して複数のポジションを守り、打順を問わず結果を残してきた郡司選手の存在は、新庄監督が目指すチーム作りを象徴しています。この日の活躍を受け、新庄監督が「明日は4番で行ってもらおうかな」と試合後に語ったことは、結果を出した選手を評価するというチームの方針を明確に示しています。
III. 新庄監督の采配:継投を宮西コーチに一任
選手たちの活躍に加え、この試合では試合後の監督インタビューで明かされた采配も注目を集めました。伊藤投手からリリーフへの継投という、試合の勝敗を左右する重要な判断を、新庄監督自身は行っていなかったのです。
「今日は宮西ウルトラダイナミック総合コーチが継投をしてくれて」。
監督の口から語られたのは、投手交代の判断を、選手登録を外れている宮西尚生投手に任せていたという事実でした。しかも、これは「2週間前ぐらいから伝えてた」という、あらかじめ準備されていたプランでした。
この采配の意図について、新庄監督は「やっぱり長年こういう舞台で戦ってきて、凄いプレッシャーのある場面でも900登板してきた宮西くんが選手に近いんで。そういう気持ちも分かるだろうし、そういう期待を込めて(継投を)してもらいました」と説明しました。
これは、現場の状況を最も理解している専門家に判断を委ねるという、合理的な決断です。監督という立場からは完全には把握しきれないマウンド上の投手の状態を、同じ投手であり、豊富な経験を持つ宮西投手が判断することで、より的確な継投が可能になります。
この決断は、投手陣に安心感と納得感を与えたと考えられます。かつて新庄監督の起用法に葛藤した経験を持つ宮西投手に、これ以上ない形で信頼を示すことで、チーム内の結束をより強固にする狙いもあったのかもしれません。これは、選手を信じ、その能力を最大限に引き出すという新庄監督の考え方が表れた采配でした。
IV. 盤石のリリーフ陣:田中と齋藤が完璧な継投
宮西「総合コーチ」による最初の采配は8回でした。7回115球を投げた伊藤投手に代わり、マウンドに送られたのは田中正義投手でした。
田中投手は、その期待に応え、オリックスの中軸打線をわずか9球で三者凡退に抑える見事な投球を見せました。そして、試合の流れをしっかりと9回に繋ぎ、ホールドを記録しました。
最終回、クローザーとしてマウンドに上がったのは齋藤友貴哉投手。160 km/hを計測する速球を武器にオリックス打線を抑え込み、11球で三者凡退に仕留めて試合を締めました。エースが試合を作り、リリーフ陣が完璧に抑えるという、理想的な形で2−0の完封リレーが完成しました。リリーフに交代してからの日本ハム投手陣は、一人の走者も許さない完璧な投球を見せ、宮西コーチの采配と、それに応えた投手陣の見事な連携プレーの賜物でした。
V. 試合後のコメント:次戦への展望
試合後、新庄監督はすでに次戦を見据えていました。「初戦取れたってことはもの凄く大きいんで」と勝利の重要性を語り、第2戦の先発に北山亘基投手を起用することを明言しました。さらに、「2−1で勝ちたいと思います」と具体的なスコアにも言及しました。
この「2−1で勝ちたい」という発言は、日本ハムが目指す戦い方を示唆しています。つまり、強力な投手陣と堅い守りを中心に、少ない得点を守り切って勝利するというスタイルです。この初戦の2−0というスコアは、その戦い方がポストシーズンの舞台でも有効であることを証明する結果となりました。
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