伊藤大海、エースの証明!8回11Kの圧巻投球で鷹を完封。郡司4打点、一矢報いるも未だ崖っぷち【CSファイナル第3戦】

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クライマックスシリーズ・ファイナルステージ第3戦。 北海道日本ハムファイターズが福岡ソフトバンクホークスを6-0で下し、崖っぷちでようやく一勝を掴み取りました。

ただ、これは逆転への狼煙(のろし)というより、生き残るために「最低限必要な一歩」だった、という冷静な勝利だったように思います。スコアボードには6-0と刻まれましたが、これでようやく1勝3敗(リーグ王者ホークスのアドバンテージ1勝を含む)。依然としてホークスが絶対的に優位な状況に変わりはありません。

しかし、この1勝が持つ意味は非常に大きい。 初戦、第2戦と2試合でわずか1得点に封じられていた打線が沈黙を破り、投手陣がホークスの強力打線を完封した。これは、ファイターズがこのシリーズを勝ち抜くための唯一の方程式、すなわち**「支配的な先発投手を中心とした失点を許さない野球」**を体現できた証です。

この勝利は、奇跡の逆転劇に向けた「勝ち方」の設計図を示してくれた、そう信じたい一戦となりました。

これぞエース!伊藤大海、8回116球の熱投

疑いようもなく、この勝利の最大の立役者は先発・伊藤大海投手です。

8回を投げ、116球、被安打5、奪三振11、与四球わずか1、そして無失点。

まさにエースの称号にふさわしい、圧巻のピッチングでした。マウンド上での彼は、冷静さの中に熱い闘志を秘め、チームが置かれた絶体絶命の状況を一身に背負っているかのようでした。

今季、195奪三振で最多奪三振のタイトルを獲得した実力は本物です。 首位打者の牧原大成選手、同2位の柳町達選手を擁する球界屈指の強力打線を相手に、持ち味を存分に発揮しました。

特に素晴らしかったのが、その制球力。 8イニングで許した四球は、わずかに1つ。 自らのミスで無駄な走者を溜めなかったため、ホークスが得点するには複数のヒットを連ねるしかありませんでした。そして、走者が出ても、威力あるストレートと多彩な変化球を武器に、奪三振という形でことごとく反撃の芽を摘み取ってくれました。

卓越した制球力(少ない四球)と、圧倒的なボールの威力(多い奪三振)。 この二つが完璧に融合したピッチングこそが、チームを崖っぷちから救い上げる原動力となったのです。

かつてのエース・上沢直之との投げ合い

この試合は、ファイターズのエース伊藤投手と、かつてファイターズのエースとして君臨し、今季からホークスのユニフォームを纏う上沢直之投手との投げ合いという点でも、大きな注目を集めました。

結果は、効率的で支配的な投球を見せた伊藤投手に軍配が上がりました。

上沢投手も6.2回を投げ10奪三振と、ボールの威力は健在でした。しかし、126球を要し、7安打3四球で6失点。ファイターズ打線が粘り強く球数を投げさせ、彼を苦しめた様子がうかがえます。

勝負を分けたのは7回。 ルーキー山縣選手のソロ本塁打で3点目を失った後、上沢投手は連続四球で満塁のピンチを招きます。疲労は明らかでした。 そして、この試合の勝負を決定づける郡司選手の走者一掃タイムリーを浴び、マウンドを降りました。

奪三振数だけ見れば互角に見えても、その内実には「効率性」と「制球力」という、勝敗を分かつ決定的な差があったのかもしれません。

伊藤の快投に応えた打線。郡司が4打点の大活躍!

エースの快投に、ここまで沈黙していた打線もようやく応えました。 その中心にいたのが、4番に座った郡司裕也選手と、3番のアリエル・レイエス選手です。

1回表 1死一、三塁のチャンスで、4番・郡司選手がライトへきっちりと犠牲フライを放ち先制。 この1点が、伊藤投手に精神的な余裕を与え、試合の主導権を握る上で非常に大きな意味を持ちました。

4回表 3番・レイエス選手がレフトスタンドへソロ本塁打。 今季二冠王の主砲が、まさに期待通りの働きで貴重な追加点を挙げます。

7回表 そして、試合を決定づけるビッグイニングが訪れます。 まず、ルーキー山縣選手のソロ本塁打で流れを掴むと、上沢投手の疲労に乗じて二つの四球で満塁。 ここで打席には再び、郡司選手。 この絶好機に、センターへ走者一掃となる3点タイムリー二塁打を放ち、6-0。試合の趨勢を完全に決定づけました。

この日の郡司選手は、先制の犠飛とダメ押しの3点タイムリーで2安打4打点の大活躍。まさに「4番の仕事」を完璧に果たしてくれました。

「つり名人と4番の顔」新庄監督の言葉に込められた信頼

試合後、新庄剛志監督は広報を通じて、いつものように短いコメントを発表しました。

「つり名人と4番の顔。あとは選手に聞いてあげて!」

この簡潔な言葉に、この日の勝利の本質と、指揮官の選手への深い信頼が凝縮されています。

「つり名人」とは、言わずと知れた伊藤大海投手のこと。趣味が釣りであることと、冷静に打者を誘い込み、要所で確実に仕留める投球スタイルを重ね合わせた、見事な表現です。

そして「4番の顔」。 これは、4打点を挙げた郡司選手への最大級の賛辞でしょう。単なる「4番_打者_」ではなく、「」と表現したところに、重責を担う存在として公に認めた監督の意図が感じられます。

「あとは選手に聞いてあげて!」とメディアのスポットライトを選手たちに向ける姿も、いつも通り。勝利の功績は選手たちのものであるという、強いメッセージが伝わってきます。

まだ道半ば。しかし確かな「勝ち方」を示した一勝

この6-0の快勝は、ファイターズに明日を戦う権利をもたらしました。

しかし、シリーズの全体像を冷静に見つめれば、依然としてホークスが3勝1敗(アドバンテージ含む)と日本シリーズ進出に王手をかけている厳しい現実に変わりはありません。

ファイターズがここから逆転するには、もう一つも負けられない「3連勝」が必要です。

それでも、この第3戦の勝利が持つ価値は大きい。 それは、ファイターズがこの先、奇跡を起こすための**「勝利の設計図」**を提示してくれたからです。

その設計図とは、 「エース級の投手が試合を支配し、打線が多角的な攻撃で援護し、そして守備がミスなくそれを支える(この試合、ファイターズの失策は0でした)」 という、極めてシンプルかつ実行の難しい野球です。

課題は明確。この日のようなほぼ完璧な野球を、リーグ最強のチームを相手に、敵地で、あと3試合連続で再現しなければなりません。

この勝利はターニングポイントではなく、長く険しい道のりの上の一歩に過ぎない。 しかし、それは絶望的な状況下で踏み出した、確かな一歩です。

この勝利から得られる最大の収穫は、1勝という結果そのものよりも、極限のプレッシャーの中で自らの「勝ち方」を再確認できたこと。

「3連勝しなければ」という漠然とした希望から、「第3戦のプロセスをあと3回再現する」という、具体的で実行可能なタスクへ。

その意識の変化こそが、この静かなる反攻がもたらした、最大にして最も価値ある戦果なのだと信じています。

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