劇的逆転勝利でファイナルS進出!レイエスが決勝打、斎藤が締めたCS第2戦の死闘

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第1章 決着の瞬間:レイエスの8回の殊勲打が福岡への切符を決める

2025年10月12日、エスコンフィールドHOKKAIDOは熱気に包まれていた。1点ビハインドで迎えた8回裏、2アウト。北海道日本ハムファイターズは、崖っぷちに立たされていた。しかし、この土壇場で主砲が輝きを放つ。アリエル・マルティネスがオリックス・バファローズの3番手、岩嵜翔の投じた剛速球を捉えると、打球は右翼手の頭上を越え、フェンスに到達した。この一打で二者が生還し、スコアは3-4から5-4へと劇的に覆った。

この勝利により、ファイターズは「2025 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファーストステージを2勝0敗のストレートで突破。リーグ王者・福岡ソフトバンクホークスが待つ、みずほPayPayドーム福岡でのファイナルステージ進出を決めた。

試合後、新庄剛志監督はまず、この劇的な勝利をファンに届けられた喜びを口にした。「こういう試合を今日来てくれたファンのみんな、全てのファイターズファンに見せられたっていうのが一番うれしいですね」。

この一勝は、単なるポストシーズンの勝利以上の意味を持つ。それは、シーズンを通してチームが遂げてきた成長の証明であった。新庄監督が続ける。「今年のシーズン戦ってるときにはもう、成長感じてたし。こういう勝ち方ができるチームになってるんで」。先行され、苦しい展開を強いられながらも、終盤に試合をひっくり返す。この粘り強さと勝負強さこそ、今季のファイターズが手に入れた最大の武器であり、この日の勝利はその集大成と言えるものだった。

第2章 序盤の乱打戦:清宮の反撃打が試合の流れを繋ぎとめる

試合は序盤から激しく動いた。2回表、オリックスの4番・杉本裕太郎がファイターズ先発・北山亘基からレフトスタンドへ先制のソロホームランを放ち、均衡を破る。さらに3回表には、二死一、三塁の場面で3番・紅林弘太郎がレフトへ痛恨の3ランホームラン。スコアは一気に4-1となり、オリックスが試合の主導権を握ったかに見えた。

しかし、ファイターズはすぐさま反撃に転じる。2回裏に水谷瞬のタイムリーヒットで1-1の同点に追いつくと、3点を追う3回裏、一死一、二塁のチャンスで打席には5番・清宮幸太郎。オリックスのエース・宮城大弥が投じた一球を完璧に捉えた打球は、センターの頭上を越える2点タイムリースリーベースとなった。この一打でスコアは4-3。ファイターズは1点差に詰め寄り、試合の流れをオリックスに完全に渡すことを拒んだ。

この清宮の一打は、8回の逆転劇を除けば、この試合で最も重要な攻撃だったと言える。もしこの場面で反撃できていなければ、点差は3点のまま、相手エースを前にチームの士気は大きく削がれていた可能性が高い。そうなれば、中盤以降の投手起用や戦術も大きく変わり、終盤の逆転劇が生まれる土壌そのものが失われていたかもしれない。清宮のタイムリーは、点差を縮めただけでなく、チームに「まだ戦える」という強い意志と希望を植え付け、後の劇的な結末へと繋がる道筋を描いた決定的な一打だった。

第3章 中盤の攻防:両軍ブルペンの熾烈な応酬

序盤の乱打戦から一転、試合は中盤から投手戦の様相を呈した。4回4失点と苦しんだ先発の北山に代わり、ファイターズは5回からブルペン陣を投入。金村尚真を皮切りに、後続の投手陣がオリックス打線を完璧に封じ込め、1点のビハインドを保ったまま終盤へと望みをつないだ。

一方、オリックスも3回3失点で降板した先発・宮城の後を継いだ2番手・九里亜蓮が圧巻の投球を見せる。九里は4イニングを無失点に抑える完璧なリリーフでファイターズ打線の反撃を許さず、試合は4-3のまま膠着状態に陥った。

この中盤の攻防は、現代のポストシーズン野球を象徴するブルペン総力戦そのものだった。オリックスは九里の快投によって勝利の方程式を完成させたかに見えた。しかし、ポストシーズンの戦いでは、たった一つの綻びが命取りになる。ファイターズのブルペンが「ユニット」として機能し、最後まで失点を許さなかったのに対し、オリックスは九里から岩嵜へと繋ぐリレーの最終盤で、その鎖が断ち切れてしまった。このブルペンの総合力の差が、最終的に試合の行方を決定づける隠れた要因となった。

第4章 8回のドラマ:レイエスと矢澤がもたらした逆転劇

そして運命の8回裏が訪れる。オリックスのマウンドには、九里の後を受けて3番手の岩嵜翔が上がっていた。ファイターズは二死からランナーを二人ため、一打逆転のチャンスを作る。打席には4番のレイエス。カウントはフルカウントとなり、球場のボルテージは最高潮に達した。

新庄監督が「自分だったらフォーク待ってましたね」と振り返る場面で、レイエスは156km/hのストレートに狙いを定めていた。完璧に捉えた打球はライトへ。この逆方向への一打が、走者二人をホームへ迎え入れる逆転の2点タイムリーヒットとなった。

新庄監督は主砲の一打を「真っすぐを捉えたところはすごいなと思いましたね。また逆方向っていうところも素晴らしいし、さすがですね。さすが打点王、本塁打王。頼りになりますね」と絶賛した。

しかし、この劇的な逆転劇はレイエスの一打だけで完成したわけではない。一塁から一気にホームまで駆け抜けた矢澤宏太の走塁が、決勝点を生み出した。その驚異的なスピードがあったからこそ、同点ではなく逆転が成立したのだ。このプレーについて、新庄監督は「矢沢君じゃなかったらぞっとしますね。矢沢君、五十幡君じゃなかったら同点止まりですからね」と、その価値を最大限に評価した。

この決勝プレーは、まさに「新庄ファイターズ」の野球を象徴する場面だった。本塁打王の称号を持つレイエスの「パワー」がチャンスを作り出し、リーグ屈指の俊足を持つ矢澤の「スピード」がそれを最大限に活かしきる。一つのプレーの中に、チームが掲げる二つの柱が見事に融合していた。この勝利は、個人のヒーローによるものではなく、チーム全体の哲学と戦術が結実した結果だったのである。

第5章 新たな守護神:斎藤友貴哉が勝利を締めくくる

劇的な逆転の直後、9回表のマウンドに上がったのは、今やチームの絶対的守護神となった斎藤友貴哉だった。前日の第1戦に続き、この日もセーブ機会での登板となった斎藤は、スタンドの期待に見事に応える。オリックスの廣岡大志、太田椋、紅林弘太郎を三者凡退に打ち取り、試合を完璧に締めくくった。

新庄監督は、斎藤の成長に目を細める。「いやもう、自信持って投げてるところが安心感というか、成長したなっていうふうに見てますね」。

この斎藤のクローザーとしての成功は、決して偶然の産物ではない。それは、指揮官の長期的なビジョンが結実した瞬間でもあった。「去年のファン感で、田中君と(斎藤)友貴哉君を抑えにするって(宣言した)のは、間違いではなかったっていう」。ファン感謝祭という異例の場でクローザー構想を公言するという新庄監督ならではのやり方は、当時大きな話題を呼んだ。その大胆な賭けが、ポストシーズンという最高の舞台で、最高の形で証明されたのだ。

監督は斎藤の成功の裏側をこう語る。「毎日の努力でつかみ取った。あとは1つアドバイスをして良くなった。それは言えないですけどね」。選手の努力を称えつつ、核心的なアドバイスの存在を匂わせる言葉は、選手との深い信頼関係と、新庄監督ならではの指導者としての一面を物語っている。斎藤のセーブは、単なる記録以上の価値を持つ、監督と選手の信頼が生んだ勝利の証だった。

第6章 いざ福岡へ:自信を胸に最後の関門へ挑む

オリックスを2連勝で下したファイターズは、10月15日から始まるファイナルステージへと駒を進める。敵地・みずほPayPayドーム福岡で、リーグ王者・福岡ソフトバンクホークスとの決戦に臨む。

新庄監督は、次なる戦いに向けて力強く語った。「去年の(3連敗の)悔しさを胸に、どうやって戦って、またこっち(日本シリーズでエスコン)に戻ってくるかっていうところは、選手たちがね、一番強い気持ち持ってるんで、もう信頼して臨みたいと思います」。

挑戦者として臨む立場ではあるが、そこに気後れはない。監督は、王者ホークスもファイターズの勢いを認めているはずだと語る。「認めてくれてると思うんで。小久保監督も、いい試合ができるだろうなっていう想像で、僕と同じ気持ちです」。そして、シリーズ全体を盛り上げたいという思いを口にした。「最後の最後までパ・リーグが、プロ野球が盛り上がってくれたらっていう気持ちは一緒ですからね」。

これは、単なる意気込みではない。新庄監督は、メディアを通じて巧みにファイナルステージの構図を描き出している。「挑戦者」という受け身の立場ではなく、「好敵手」として対等な立場でシリーズに臨むというメッセージを発信することで、選手たちから不要なプレッシャーを取り除き、自信を持って戦うための精神的な環境を整えているのだ。

劇的な勝利で勢いに乗るファイターズ。新庄監督は最後にこう締めくくった。「まあ、明日緊張感のある練習をして、福岡で戦ってきます」。確かな成長を遂げたチームは、自信と誇りを胸に、日本シリーズ進出をかけた最後の関門に挑む。

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