帰ってきた背番号7。松本剛の復活打が導いた、ファイターズ快勝の一日

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前夜の悔しさを振り払って

前日の試合の記憶は、まだ多くのファンの心に重たく残っていただろう。勝利まであと一歩に迫りながら、9回裏、頓宮選手の劇的な逆転サヨナラ3ランを浴びて敗れた8月1日の試合。これ以上ないくらい悔しい負け方で、チームは2連敗。重い空気が漂う中、翌8月2日、ファイターズは京セラドーム大阪で再びオリックスと対戦した。

前日の精神的なダメージからどう立ち直り、チームとしての底力を見せられるか。その答えとしてファイターズが示したのは、7-1という見事な快勝だった。この勝利は、投打ががっちり噛み合ったチームプレーの賜物だ。中でも、一人の選手の復活を印象付ける一打が、チームに大きな勇気と勢いをもたらしたように思う。その選手とは、苦しい時間を乗り越えて一軍の舞台へ帰ってきた、背番号7・松本剛選手だ。

試合の流れ – 序盤から掴んだ主導権

ファイターズの選手たちに、前日の敗戦を引きずる様子はなかった。試合が始まるとすぐに、攻撃的な姿勢を見せていく。

初回、ファイターズは一死一、二塁のチャンスを作ると、4番のレイエス選手がしぶとくライト前に運び、まず1点。この一打で、前日の重い空気を振り払ったように感じた。さらに続く5番・郡司選手がきっちりとライトへ犠牲フライを打ち上げ、2点目。派手さはないけれど、走者を着実に還す丁寧な攻撃で、試合の主導権を握った。

対するオリックスも黙ってはいない。3回裏には、杉本選手がレフトスタンドへソロホームランを放つ。これでスコアは2-1となり、試合は緊迫した展開になった。

しかし、ここからのファイターズは落ち着いていた。4回表には野村選手がレフトへタイムリーヒットを放ち、すぐさまリードを3-1と2点差に戻す。そして6回表、この日マスクを被っていた郡司選手が、今度は自らのバットでレフトスタンドへソロホームラン。スコアを4-1とし、試合の流れをぐっと引き寄せる貴重な追加点となった。

試合を決めた、最後の一押し

そして、試合の行方を決定づけたのは9回表だった。ファイターズは攻撃の手を緩めず、さらにチャンスを広げる。二死一、二塁の場面で打席に立ったのが松本剛選手だった。粘りのバッティングでフルカウントまで持ち込むと、レフトへ痛烈な打球を放つ。これが走者を一掃する2点タイムリーツーベースとなり、スコアを7-1とするダメ押しの一打になった。これは単なる追加点ではない。苦しんだ彼が放った、復活をはっきりと示す一打だった。

    背番号7の帰還 – 松本剛、苦しみを乗り越えて

    この日の松本選手の活躍は、決して偶然ではない。そこには、首位打者の栄光から一転、二度の登録抹消という悔しさを味わった彼の、苦しい道のりがあった。

    今シーズンの松本選手は、深刻な打撃不振に苦しんでいた。特に5月は打率1割にも満たない時期があり、5月8日には再調整のために登録を抹消された。これが今季2度目の二軍降格。かつての首位打者にとって、どれほど苦しい時期だったか、想像に難くない。

    7月29日、彼は満を持して一軍へ戻ってきた。するとその日のソフトバンク戦で、復帰後初安打を含む2安打1打点を記録。9回には執念のタイムリー内野安打を放ち、その存在感を示した。翌30日の試合でも先制の犠牲フライを放つなど、着実に結果を残し始めていた。

    これらは、復活への確かなステップだったのだろう。そして迎えた8月2日のオリックス戦。9回に放ったダメ押しの2点タイムリーは、これまでの積み重ねが結果として表れたものだった。松本剛という打者が本来持つ勝負強さが、完全に戻ってきたことを証明するような一打だったと思う。

    新庄監督の言葉 – 「鎌ケ谷で焦げたくないんで」

    松本選手の復活の裏には、新庄監督らしいアプローチがあったようだ。試合後、監督が自身のSNSで明かしたやり取りから、その一端がうかがえる。

    監督は松本選手に対し、「一軍上がってきてしょぼいバッティングしたら即鎌ケ谷にまた行かせるぞ」と、かなり直接的で厳しい言葉を投げかけたという。これは、大きな期待の裏返しであり、結果が全てのプロの世界の厳しさを伝える、新庄監督らしい「檄」だったのかもしれない。

    この強烈なプレッシャーに対し、松本選手はこう返した。「それだけは勘弁してください。焦げたくないんで打ちまくります」。このやり取りに、監督は「って鎌ケ谷ってそんなに暑いのか~」とユーモアを交えて綴っている。

    そして、投稿をこう締めくくった。「やっと 頼もしかった背番号7が帰って来ました👏👏👏」。厳しい要求の後に送られる、これ以上ない公の賛辞。プレッシャーをかけ、ユーモアで和ませ、最後は最大限の信頼と称賛で背中を押す。これこそが、選手の心を掴む新庄監督らしいやり方なのだろう。

    さらに興味深いのは、監督が選手たちに「7時半には消灯」と早期就寝を促しながら、自身のSNS更新は午後9時半過ぎだったことだ。「また 寝れなくなる NICE打点 有難う」という言葉からは、チームの勝利、そして愛弟子の復活を心から喜び、興奮を噛み締めている一人の野球人としての素顔が垣間見えるようだった。

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