逆転劇!伊藤大海の圧巻12Kと万波中正、魂の決勝打

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2025年6月27日、蒸し暑さが漂うベルーナドーム。試合は、エース伊藤大海の粘り強い投球を土台に、打線が好機を逃さず、特に万波中正が決定的な一打を放つという、チームの理想的な勝利の方程式を描き出した。この敵地での逆転劇は、新庄剛志監督の下で培われた精神的な強さと、いかなる状況でも勝利を諦めないチームのアイデンティティを雄弁に物語っている。

ライオンズの咆哮:序盤の猛攻と伊藤大海の試練

試合序盤、主導権を握ったのはホームの西武だった。ファイターズ先発の伊藤大海は、立ち上がりからライオンズ打線の厳しい攻めに晒される。

試合が動いたのは2回裏。西武は先頭のネビンが右翼線への二塁打で出塁すると、続く長谷川の左前安打で無死一、三塁の好機を作り出す。ここで源田を三振に仕留めたものの、続く山村の遊ゴロを中島卓也が失策。この間に三塁走者が生還し、西武が先制点を挙げた。さらに死球で一死満塁と、伊藤は絶体絶命のピンチを迎える。しかし、ここからがエースの真骨頂だった。伊藤は後続の古賀、西川を連続で見逃し三振に斬って取り、この回を最少失点で切り抜ける。この「崩れない粘り」こそが、のちの逆転劇への重要な伏線となった。

続く3回裏、伊藤は西武の渡部聖弥に左翼スタンドへ運ばれるソロ本塁打を浴び、スコアは0-2に。序盤で2点のビハインドを背負い、試合の流れは完全に西武に傾いたかに見えた。しかし、この苦しい状況でもマウンドに仁王立ちする伊藤の姿は、ベンチとファンにまだ試合は終わっていないという強い意志を伝えていた。

予期せぬ触媒:エース降板とファイターズの反撃

試合の流れを大きく変えたのは、4回に起きた予期せぬアクシデントだった。

まず反撃の狼煙を上げたのはファイターズ打線だった。4回表、先頭の田宮裕涼が西武のエース・今井達也から右翼スタンドへ飛び込むソロ本塁打を放ち、1点差に詰め寄る。この一発で息を吹き返したファイターズは、さらに二死一、二塁と今井を攻め立てた。

ここで打席には万波中正。その万波への投球の途中、今井が突如マウンド上で膝に手をつき、苦悶の表情でしゃがみ込んだ。気温27.3度、湿度81%という厳しい環境の中での体調不良とみられ、今井は無念の緊急降板となった。このアクシデントにより、西武ベンチは急遽、山田陽翔をマウンドへ送らざるを得なくなる。

相手エースの突然の離脱という混乱を、ファイターズは見逃さなかった。満塁となった場面で、打席に立った中島卓也が冷静に四球を選び、押し出しでついに同点に追いつく。

エースの矜持:伊藤大海、8回127球の熱投

試合が振り出しに戻った後、ファイターズのエース伊藤大海は、その真価を余すところなく発揮した。序盤の2失点から見事に立ち直り、中盤から終盤にかけてライオンズ打線を完全に支配する。

特筆すべきは、その圧倒的なスタミナと奪三振能力である。8回を投げ抜き、投球数は127球に達した。これはベンチの絶大な信頼の証であり、伊藤自身もその期待に応え、圧巻の12奪三振を記録。4回に同点に追いついてもらった後、伊藤の投球はさらにギアを上げた。5回以降はスコアボードにゼロを並べ続け、特に7回は三者凡退に抑えるなど、相手に一切の隙を与えなかった。

相手エースがマウンドを去った一方、ファイターズのエースはマウンドに立ち続け、その存在感を増していった。この伊藤の気迫あふれる投球は、西武ナインに「最大の好機は過ぎ去った」という無言の圧力をかけ、相手ブルペンへの負担を増大させた。まさに、チームを勝利に導くエースの投球そのものだ。

決着の瞬間:万波中正、魂の一振り

試合は2-2の同点のまま、終盤の8回表へ。ここで試合の主役となったのが、それまで悔しい打席が続いていた万波中正だった。

この日の万波は、第1打席と第3打席で三振に倒れており、好機での凡退が続いていた。しかし、最も重要な場面で、彼はそれまでの鬱憤を晴らすかのような一振りを見せる。

8回表、ファイターズは西武の救援・甲斐野を攻め、一死満塁という絶好の勝ち越し機を迎える。球場の誰もが固唾をのんで見守る中、打席に入った万波は、迷いなく初球を強振。打球は高く舞い上がり、右翼手の頭上を越える勝ち越しの2点適時二塁打となった。この一打でスコアは4-2となり、ファイターズが試合の主導権を完全に握った。さらに続く山縣の犠牲フライで1点を追加し、リードを3点に広げた。

新庄監督、両チームの投手を気遣う

試合後、新庄監督は伊藤投手について「いやぁ危ない、危ない。熱中症が危ない。(8回まで、よく)投げた方ですよ。この球場だけは、もう(目標31回の)完投王国なし。危ない、危ない」と、その熱投を称えつつも、厳しい暑さの中での登板を心配するコメント。

さらに、緊急降板した西武の今井投手についても「今後、このマウンドでの今日の出来事がトラウマにならなかったらいいですね。急に来るのは怖いと思うから」と、敵チームの選手を気遣う言葉を述べ、暑さによるアクシデントが尾を引かないことを祈っていました。

投打のヒーローの活躍と、両チームの選手を思いやる監督の言葉が印象に残る一戦となりました。この勢いで、ファイターズのさらなる快進撃を期待しましょう!

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