松村北斗の演技が光る|映画「ファーストキス 1ST KISS」感想【ネタバレあり】

映画レビュー エンタメ

映画「ファーストキス 1ST KISS」を観た。

交通事故で夫を亡くした妻が、ひょんなことからタイムスリップの手段を手に入れ、一度は離婚を決意するまで関係が冷め切っていた夫に会うために過去へ飛ぶ。彼女は夫の未来を変え、救うことができるのか?

主人公・硯カンナを演じるのは松たか子さん。そして、事故で命を落とす夫を演じたのが松村北斗さんだ。物語のほぼ全編がこの二人の会話で構成されており、まさに二人の演技力に支えられた作品といえる。年齢差やキャラクターの個性、そして物語の設定まで、どれをとってもこのキャスティングだからこそ成立した映画だった。二人のやり取りに引き込まれ、あっという間の二時間だった。

松村北斗さんは20代と40代、さらには愛に満ちた時期と関係が冷め切った時期、実に何通りもの人物像を演じ分けた。彼の演技を通して、同じ人物でありながらも、違う時間軸での変化をリアルに感じることができた。

僕は松村北斗さんのアイドルとしての姿は知らない。歌やダンスのイメージがない。でも、彼の出演するドラマを数本観ただけで、俳優としての実力を確信した。「西園寺さんは家事をしない」の時もそうだったが、彼の演じるキャラクターにはどこか不器用でありながらも真っ直ぐな魅力がある。今回の役柄では、さらに「困った人を放っておけない」という性格が加わり、前半では未来から来た妻に翻弄されながらも恋に落ちていく純朴な青年として描かれていた。頼りなさと年下らしさを感じさせつつも、本質を見抜くような鋭さと、それを信じる強さがあった。

そして、未来の妻からすべての事情を聞いた瞬間、松村北斗さんの演技は一気に変化する。そこには、成長した大人の男の姿があった。15年の時間差を持つ妻と向き合ううちに、彼の中で何かが変わる。その変化が自然でありながらも力強く、見ているこちらも心を揺さぶられた。恋を知り、愛を知ることで人が急成長する──その瞬間を松村北斗さんの演技を通して目撃した気がする。同じ男性として、思わず「格好いいな」と思った。

最初に未来を変えようと奔走したのは妻だった。しかし、結婚してからの15年間、その未来を知っていたのは夫だけだった。彼は何も知らない妻を愛し続ける。それを思うと切なくなる。心から妻を大切に思いながら、自分達の未来を知ってしまった彼の葛藤はどれほどのものだったのか。誰も悪くなくても、運命は変わらないのか──。

それでも、人生そのものは変わっていたはずだ。繰り返される絶望感と喪失感の中に、それでも幸福感が残るのは、松たか子さんが持つ明るさと強さのおかげかもしれない。

「ああ、切ないってこういう感覚だったな」と久しぶりに思い出した。

この作品を観て、小説・映画ともに大好きだった「いま、会いにゆきます」を思い出した。それは、どちらの作品においても、心からの愛を知ってしまったら、人はたとえ自分が死んでしまうかもしれないと分かっていても、その愛する人に会いに行かずにはいられないという点で共通しているからだ。未来を変えられるかどうかではなく、ただ愛する人に会うために進んでいく。

それこそが、この映画の最も美しい部分なのかもしれない。

「映画『ファーストキス』の詳細は公式サイトをご覧ください。[公式サイトリンク]」

© 2025 TrendTackle. All rights reserved.

コメント

タイトルとURLをコピーしました